「国際物理オリンピックに参加して」 横田 猛 リレー・エッセイ 2-5

国際物理オリンピックに参加して「横田 猛」

2009年メキシコ大会
横田 猛

 私が物理学に興味を持ち始めたきっかけには、間違いなく物理オリンピックがあったと思います。物理オリンピック、あるいは国内大会の物理チャレンジを知ることになったきっかけは、高校に入学した頃に、物理オリンピックに出場した卒業生が紹介されている学校の広報誌を見たことだったと記憶しております。高校に入りたてで何か目標を持ちたいと考えており、またもともと科学に興味があり漠然と将来科学の道に進みたいとも考えていたので、良い機会だと思い物理学を勉強し始めました。

いざ勉強してみると、世の中の様々な基本的な現象、例えば物の動き方、温度の決まり方、様々な電磁気現象、といったことがシンプルに法則化され、またそこから数学を使っていかに様々な予言が行えるかということを知ることができ、物理学というものを非常に魅力的に感じるようになりました。物理を勉強し新たなことを知ることで何か自分の見える世界が広がった気がして、そのことが快感だったのだと思います。

その後幸運にも物理チャレンジ、物理オリンピックに参加することができましたが、国内外で物理に興味がある多くの同年代に出会ったり、研究者の話を聴いたり、研究施設を見学したりと、非常に刺激的な体験をさせていただいたと思います。大会そのものへの参加も有意義でしたが、物理オリンピック代表候補となった際の研修では地元の大学に何度か足を運び、実験についての基本的な考え方を教わったり、研究で使うような実験装置を少し触らせてもらったりと、実際の研究者と密な時間を過ごさせていただいたことが非常に印象に残っております。

様々な自然現象の裏にある法則や原理を探ること、また得られた法則、原理から様々な自然現象についての予言をすることは物理学の大きな目標でもありますが、物事を根本から自分の言葉で曇りなく理解できた瞬間は非常に快感を伴うものだと思います。もちろん他の学問でもそうなのかもしれませんが、物理学はこのような知的快感を与えてくれる場として魅力的なものだと感じます。また単に物理学は人々の知的好奇心を満たすというだけではなく、現代の社会を支える様々な先端技術の礎となる学問でもあるので、非常に学び甲斐のあるものです。加えて、物理学の勉強や研究を通じて培われる基礎に立ち返って物事を理解しようとする姿勢、あるいは数式を実際の現象と照らし合わせながら柔軟に使いこなす能力などは、社会に出る上でも強みになっているのではないかと、物理学を修めた後に様々な分野で活躍している人々を見て感じています。

私は現在物理学の研究に携わる仕事をしていますが、振り返ってみると現在の人生の方向性に大きく影響を与えたのが偶然出会った物理オリンピックで、不思議な気持ちになります。これから日本で行われる物理オリンピック2022が、中学・高校生の方々の何かのきっかけになることを願い、また刺激的な体験の場となることを確信しております。

【略歴】

出身地 福岡県福岡市
出身高校 私立西南学院高等学校 2010年卒業
大学院 京都大学理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士課程 2019年修了
現職 高エネルギー加速器研究機構 研究員

メキシコ大会にて海外代表団との一枚

【ご支援欄】
IPhO2023日本大会は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)からの「次世代人材育成事業」の「国際科学技術コンテスト支援」並びに公益社団法人応用物理学会からの「応用物理学学術・教育奨励基金」によるご支援を頂いています。
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