「ワクワクする問いを見つけよう」
千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター教授
石原 安野
問題がスラスラ解けるとうれしくなって、その学問が好きだ、と思う人もいるだろう。しかし、私はわからない問いに出会った時こそ、好き嫌いが明らかになると考えている。
わからない問いに出会ったときには、まずは状況を整理する。そして、さて、どのように対応しようか、と考える。その時に対応の仕方がうっすらとでもすぐに浮かんでくれば、あとは解くだけだ。しかし、状況の整理からつまずく場合もあるし、状況がクリアでも解への道のりが曖昧なこともよくある。
このような、わからない問いに出会ったときの気持ちを思い出してみたい。わからないと頭を抱えるときというのは、わかる、ときよりは苦しいものである、といってもよいだろう。そして、現実の社会、現実の自然を見てみると、世の中の問いは、考えてもわからないことだらけだということにも気づくはずだ。世の中には様々な問いに溢れている。その多くは「物理学」というような一つの学問の分野に収まりきらないものである。
一方で、わからない問いや自分の知らない新しい世界との出会いにワクワクしてくることもある。そんな時私は、わからない問いに好奇心が掻き立てられている。つまり、そのことを考えるのが「好き」なのだ。そんな問いとの出会いはとてもラッキーなことである。
もちろん、わからない問いに出会って、うーっとうなってしまうときもある。考えても、どういう風に解にたどり着けばいいのかも検討もつかず考えても、考えても堂々巡り…。そんなときはその問いから少し離れてみるのもいいのではないだろうか。
本当の問いは学問の分野分けには関係なく存在しており、人それぞれに、それぞれの問いが待っている。皆さんにはぜひ自分を待っている問いは何なのか、それが、どこにあるのかをみつけてほしい。もちろんある分野の中にあるかもしれない。でも、そうでないかもしれない。
私自身の中学生、高校生時代を振り返ると、世の中は考えてもわからない問いだらけだということにいらいらすることもあった。しかし、わからない問いに出会ったときにワクワクドキドキが止まらなくなる経験もした。私にとっては、それが物理学の問いであった。その頃ワクワクした物理の問いは今もはっきりと答えられない問いも多い。時間とは何か、生命はなぜ存在するのか、我々の宇宙の外側はどうなっているのか。長年考えてもわからない。
しかし、考えているとワクワクする。こうして私は物理学が好きなんだということを自分で納得することができるようになっていったと感じている。
正解も大事だが、それより大事なのは問いだ。自分がどんな問いにワクワクドキドキするのか、ぜひアンテナを張ってキャッチしてほしい。その問いはあなただけのものだ。
【略歴】
出身地 | 静岡県富士宮市 |
出身高校 | 自由の森学園高等学校 |
大学院 | テキサス州立大学オースティン校 |
現職 | 千葉大学 ハドロン宇宙国際研究センター 教授 |