「スーパーサイエンスハイスクール」 結城 章夫 リレーエッセイ1-8

スーパーサイエンスハイスクール

山形大学名誉教授
結城 章夫

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)は、高等学校の理数系の研究活動や教育を支援するための事業です。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が事業の実施主体となり、全国に約5千ある高校の中から200校余りをSSHに指定して、5年間にわたり、生徒の研究活動や研修活動などを支援します。文部科学省が約22億円の予算を確保して、毎年1千万円前後の活動資金がJSTからSSH各校に提供されます。

この事業は、2002年度に開始されました。この時期は、教育と科学技術を担当する国の中央官庁に大きな体制の変更があったときでした。2001年1月に、それまでの文部省と科学技術庁を統合して、新たに、文部科学省という役所が誕生したのです。

私は、大学の物理工学科を卒業した後、科学技術庁に入って、長い間、国家公務員として科学技術に関係した仕事をしてきました。科学技術庁では、日本の科学技術力を向上させるためには、中学生や高校生の段階での理数系教育が大事だとの議論が盛んに行われていました。しかしながら、高校や中学校に出す予算は、文部省に計上することが原則で、科学技術庁からは予算の支出ができなかったのです。私は、新しくできた文部科学省の初代の官房長に就任しました。官房長は、中央官庁の予算を編成する責任者でもあります。私は、これは千載一遇のチャンスだと思いました。

文部科学省の初等中等教育局は、高校教育の全体に責任を負っています。理数教育は重要だけれども、国語教育や英語教育も同じように大事であり、理数教育だけを特別に支援するような予算はつけられないという立場でした。一方で、同じ省内の科学技術・学術政策局の方は、日本の科学技術力を向上させるためには、優れた研究者や技術者を育成する必要があり、そのためには、高校の理数教育を充実・強化すべきとの立場でした。

省内で様々な議論を行い、かなり難航しましたが、最後にはSSHの事業を科学技術・学術政策局の予算にしてスタートすることが決定しました。理数教育だけを特別に優遇するわけではないとの初等中等教育局の立場を守りながら、科学技術系人材の育成を強化するとの科学技術・学術政策局の政策をなんとか実現する道が開けたのです。

このように、SSHは文部科学省という新しい役所が出来たことによって初めて実現した事業です。二つの省庁を統合した効果・メリットを象徴するような予算であったと思います。

私はその後何回か、全国のSSH指定校が集まる「生徒研究発表会」に出席する機会がありました。本当に素晴らしい、感動的な発表でした。高校生でもこれだけの研究を行い、その成果を取りまとめ、立派に発表できるんだと驚かされました。

SSH事業がこれからも長く継続して、多くの高校生に、苦しいけれども楽しい研究活動を体験してもらいたいと思います。そして、優れた研究者や技術者に育っていって、日本の科学技術の将来を担ってくれることを心から願っているところです。

【略歴】

出身地 山形県村山市
出身高校 山形県立山形東高等学校(昭和42年卒業)
出身大学 東京大学工学部物理工学科(昭和46年卒業)
主な職歴等 科学技術庁研究開発局宇宙開発課長
科学技術庁研究開発局長
文部科学大臣官房長
文部科学事務次官
山形大学長
公益財団法人山形県産業技術振興機構理事長
学校法人富澤学園理事長(現職)

【ご支援欄】
IPhO2023日本大会は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)からの「次世代人材育成事業」の「国際科学技術コンテスト支援」並びに公益社団法人応用物理学会からの「応用物理学学術・教育奨励基金」によるご支援を頂いています。
IPhO 2023日本大会にご理解とご支援を頂いている団体・個人の方は、次のとおりです。
<寄付順・敬称略> 2023年8月末 現在

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